「社会的インパクト評価」を実践してみたいんだけど、まずは迷わずにできることから始めてみようと思うんだ
NPO・ソーシャル業界のバズワードともなりつつある単語、社会的インパクト評価。新しく知る概念ってぼやっとしたイメージのまま理解した気になってしまいがちですよね。
素人ながらの取り組みではありますが、社会に与えるインパクトを評価するって本当にできるのかいな?と思いながらも自分が関わるYAPの活動を評価するための準備を始めてみました。
結果が出るには時間がかかりますが、課題や考えたことの共有のために記事を書こうと思います。
社会的インパクト評価って何ですか?
NPO等の活動が社会にもたらした社会的・環境的な結果(アウトカム)を定量的・定性的に評価をして活動への価値判断を行いましょう、という取り組みが社会的インパクト評価と呼ばれるものです。
砕けた言い方をしてみると、NPO等の活動が社会に正しく認められるために、正しく評価することって大事だよね。社会的な活動の成果って定量的なものも定性的なものも、長期的なものも短期的なものもあるよね。そういうことを正しく評価していきたいよね。
という世界的な動きがあり、評価のための理論や手法が研究・実践されています。
こういう本も出ています。
社会的インパクトとは何か――社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド
「社会的インパクト評価」を実践してみたいんだけど、まずはできることから小さく始めてみようと思うんだ
というわけで今日は、社会的インパクト評価って何?NPO活動の評価って一体どんな考え方をするの?と気になっている方へ。
内閣府の報告書を読んでみました
私自身も「一体何をすれば社会的な活動の評価なんてものができるんだ!?」と気になったので、内閣府が出した調査報告書を読んでみました。
…とはいっても別に意識高いわけではなく、これまで国の報告書なんて固い読み物は一度も読んだことがなかったのですが、きっかけは日本財団さんが主催するこちらのセミナーでした。
【開催報告】NPO法人実態調査・社会的インパクト評価・地域運営組織等の報告書を読んで、NPOについて考える勉強会(日本財団CANPAN・NPOフォーラム)2016年5月9日(月)夜・東京
この勉強会は、NPO・市民活動・ソーシャルセクターに関連する報告書を読んで、NPOについて考える会。
課題図書?として各回3種類の報告書が提示され、読んでこなかった人の参加はお断り!と謳われる、なかなか硬派な勉強会です。
公的機関が出している報告書って、中にはA4で30枚とか70枚とか超大作なものもあります。3本揃うとけっこうなボリュームになりますが、それを読み込んできた熱のある方々が集まるので、ディスカッションが深くて面白い。
テーマにビビッと来たガッツのある方にはとてもおすすめです。
社会的インパクト評価の報告書ってどこで読めるんですか?
というわけで、読んでみた報告書がこちら。
社会的インパクト評価の推進に向けて-社会的課題解決に向けた社会的インパクト評価の基本的概念と今後の対応策について-(平成28年3月)
リンク先では概要と報告書本文、加えて別紙の添付資料が閲覧できます。
- (別紙) 社会的インパクト評価にか かる課題と対応策
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NPOがぶつかりうる可能性課題が整理され、それぞれの課題が改善された後の姿(目標)と、改善のための具体的な活動が記録されています。とても実践的。
- 報告書(全文)
- 報告書(概要)
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A4サイズのPDFにしてがっつり43枚。現状分析から始まり理論の解説、今後への提言などを盛り込んだ、かなり本気の報告書です。
目次はこの通り、ピンと来た方は時間を取っての読み込みをおすすめします。
・社会的インパクト評価がなぜ必要なのか
・社会的インパクト評価とは何か
・社会的インパクト評価をどのように行うのか
・社会的インパクト評価の普及に向けた課題と対応策
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一枚ペラで概要がまとまっています。まずは全体像を知るためにこちらをどうぞ。
読みましたか?本文読んでみましたか?
はい、頭ん中ぐるぐるになりますよね。なんとなく思いとしてはわかったような、まずは理想の状態は理解できた気がするような。でも実行に移すためには、私は何から始めればいいの?と。
私はそうでした。一足飛びに評価の理論を活用できるほど、整った団体じゃないんだよなー、と。
なので、まずは自分が関わる活動を評価できる状態に近づけるためにまずやるべきことは何だろうか?と考えてみました。
活動を評価するための最初の一歩は、活動の成果を測ること
当たり前のことながら、成果を測るためにはまず目標を定めることが必要です。でも、なんとなくでえいやと目標値を決めてみても説得力がない、確証が持てない。しかしそこで立ち止まってしまってはもったいない……。なので、まず現状を知ることから始めてみるのがいいのではないか?と思います。
数値化できるものを数値化する
活動状況の記録を適切に行えば、それは評価の材料になります。
・各イベントの来場人数、各事業の利用者数
・参加者の社会的属性(学生・社会人、女性・男性、年齢層など)
・ボランティアメンバーの人数、参加回数
・相談件数
数の記録は毎年の活動報告や助成金の申請などにも活用できる、使える情報です。記録を取り続けるのは多少運営の負担となるものですが、材料が揃えば事業報告や申請書類といった既存の業務が少し楽になるはずです。
まずはやりやすいところから、少しの項目からでも絶対に始めるべきです。やりましょう!
ここで大事なことは、日々の記録をしっかり回していくために運用負荷が重くならないように設計すること。
団体のミッションや活動の目的に照らして、活動を評価するために何の数字を記録する必要があるかを考えて、記録項目の取捨選択をすることをお勧めします。
完璧よりも、一歩ずつ。確実に歩んでいきましょう。
数値化したものを集計する
数値を記録したのなら、せっかくだから集計してみてみましょう。
月、週、年など時系別か、あるいはイベントの種別や参加者の属性ごとに集計して傾向や変化を見てみます。
日ごろ皮膚感覚で感じていることと数字がリンクすれば、この数値は客観的な成果として活動の結果を証明できる手段になります。報告書に使いましょう。
集計してみて、今まで気付かなかったことに気付けたならばラッキーです。気づきをこれからの活動に活かしましょう。
自分たちなりの数値の記録と集計、集計した結果の分析。自分たちなりにトライアルして評価の課題を実感した後にもう一度報告書を読んでみると、新たな突破口が見えるかもしれません。
形に則って社会的なインパクトを正しくちゃんと評価しようと力んでしまうと、結局一歩を踏み出せなくて終わってしまうこともよくあります。
まずは自分の団体でできる第一歩からはじめてみませんか?
数字に踊らされないために
ということで最後に参考になる記事を紹介します。
目標は何でも数値化すればいいってものでもない。
こちらは企業の人材育成を事例に、数字の結果を追おうとするとこんな副作用があるよー、というお話です。
数字を意識すると人間、割と簡単に踊らされてしまうものです。
NPOで活動される方ならよくご存知のはずですが、活動の成果は数字だけではありません。
成果を測るには活動に関わるみなさんの肌感覚がまずは一番大事。そこは忘れちゃいけないポイントです。
自戒を込めて。