ホームページを作る、その前に!NPO団体が情報発信戦略を考えるための4つのポイント

   

NPO団体が情報発信戦略を考えるための4つのポイント

プロボノのご依頼で一番多いのがホームページの作成です。

ホームページを作るって、ものすごくややこしそうですよね。
NPOや市民活動といったソーシャルな領域で、Web上での発信は必要不可欠だと言われています。しかし、少人数で現場の活動を運営しているNPOにとって、情報発信のためだけにデザイン、サーバー、ホームページの構築といった専門的な技術・知識を学ぶことはなかなか荷が重いことです。

しかも、NPOの情報発信には独特の難しさがあります。
NPOやソーシャルビジネスなどの社会課題に向き合う活動は、一般的な企業や店舗とは情報発信に必要な要素が異なります。なので「ホームページを作る前に知るべきこと」「ホームページの作り方」でネットで検索をかけてもいまいちピンと来なかったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

社会のあるべき姿や解決したい社会課題といった想いを中心に、多様で多角的な活動を展開していること。
スタッフや事務局のほかに受益者、活動を支えるボランティア、寄付会員などのサポーター、商品の購入者や店舗に来店するお客様、協働する行政や企業、助成金の出資者など、多様で豊かなステークホルダーが存在すること。
こういった複雑な事業体から発信する情報を交通整理し、団体の理念をシンプルなメッセージで発信し、伝えるべき相手に向けて情報を発信する。
NPOがホームページを作ろうとする時、最初にぶつかるのはこの壁です。ホームページを作るための技術的・デザイン的な作業を外部の業者やボランティアにお願いできたとしても、根本的な情報発信の骨子の部分を考えることは、団体の活動の中心を担う代表者やスタッフの皆さんしかできないことです。

冒頭の繰り返しになりますが、おそらく世の中で最もソーシャルセクターからプロボノへの依頼が行われているのはホームページの作成です。
そこでは技術やデザインのことがわからないので「ものをつくる」作業をお願いしたいという場合と、Webでの情報発信をどのように考え、実現したらいいのか相談をしたいという場合と、大きく2種類のニーズがあります。このふたつの相談を一度にお受けすることは少なくありません。
そこで依頼を受けたプロボノの多くが最初に行う仕事は、課題の交通整理を行うためのヒアリングなのではないかと思います。

ここから察するに、おそらく多くのNPO団体が、ホームページ作りに取り組み始めてから初めてNPOならではの情報発信の難しさの壁にぶつかっているのではないでしょうか。
NPOの情報発信はひとつの事業であるといえます。事業には必ず戦略を練るフェーズを経てからアイディアを実現させるフェーズに移ります。それぞれのフェーズでやるべきことを、一度にまとめて考えることは問題を複雑にしてしまいますし、精神衛生上もよくありません。

そこで今回は、ホームページを作りたいNPOやソーシャルビジネス・市民活動を担う方々へ。プロボノに依頼する前に自分たちだけでもできる、ホームページ作成に取り組む前に情報発信の戦略を考えるべき4つのポイントについて、書いてみたいと思います。何から始めたらいいのかわからない!というそこのあなた。ご自分の団体にどんなホームページが必要なのか、まずはこの順番で考え始めてみてください。

ホームページでやりたいことを考える

ホームページを作って何を伝えたいですか? まずは今考えている、情報発信したい内容を洗い出してみてください。頭の中で考えたりスタッフ同士で話をするだけでなく、紙に箇条書きにするのがおすすめです。
あんなことやりたい、こんなことやりたい。まずは思いつくことをすべて出し切ることが大事です。見すぎた夢は後から削ればいいんです。

※サンプルとして、このワークをやってみました。ちなみに架空の団体です。
まずはやりたいことを洗い出す

団体の活動を書き出す

伝えたいことを書き出したら、一度ホームページから頭を離して団体の活動自体に目を向けてみましょう。
NPOなど社会課題に向き合う団体は、受益者の様々なニーズや社会の要請に応えるために、多様なアプローチを行うものです。ほとんどのNPO団体が複数の活動を運営しているかと思います。
団体としては非公式と見なしている活動も、団体を構成する要素のひとつ。団体が目的を持って運営している活動をすべて書き出してみてください。
このとき、最初に考えた情報発信したい内容でここに当てはまらないものがあれば、団体の活動をすべて網羅できていない証拠かも。見直してみましょう。

運営元が同じ団体でも、活動が違えばターゲットやゴールは異なります。それぞれの活動ごとに、これは誰のための、何を目的とした活動なのかを書き入れてみてください。さらに、ホームページを作ることでリーチしたい新しいターゲット層があれば、そちらも一緒に書きましょう。
団体の全体像が見えるとともに、誰に何を、何のために発信する必要があるかが見えてきたのではないでしょうか。

団体の活動を整理する

それぞれの活動に必要な広報手段を考える

活動内容とターゲット、ゴールが明確になったら、どうやってターゲット層に情報を届けるかを考えましょう。誰がターゲットなのかによって情報の届け方は大きく変わってきます。
書き出してみたターゲットを見て情報の届け方が思い浮かばなければ、ターゲット層のことをよく知らないか、具体化できていないかです。すでに活動を積み重ねているNPOにとって前者はありえないですよね。よく知る活動の参加者・受益者の方を何人か思い浮かべて、この活動の対象が「どんな人なのか」を定義していきましょう。現場をよく知る皆さんならばできるはず。

それぞれの活動のターゲットと目的

どう発信するべきか考える

最後は今まで書き出してきた「やりたいこと」と「団体がするべきこと」を突き合わせて、改めてホームページで何をしたいのかを考える時間です。

ここまでで団体として、各活動として何をするべきか、ある程度整理がついているかと思います。これに加えて、届けたい相手に届くのはホームページなのか、それとも他の手段なのかという視点でもひとつ考えてみてください。
広報手段としてビラや他団体に会いに行く営業活動のほうがWebよりも優れている部分はたくさんあります。合理的に手段を選び、賢い情報発信をしていきましょう!

ホームページで何をするべきか考える

おわりに

外部の人が団体の活動や想い、強みを理解するのは、少々時間のかかることです。
技術的なスキルの必要なことを外部に委託することはある意味必要なことですが、その前段階の情報発信の戦略を考える部分は、コツさえわかれば現場をよく知る団体の方々のほうがむしろいい成果を出せるはず!と、ずっと思っています。情報発信の戦略を考え、しっかり落とし込み、プロボノを団体の補助輪として使いこなし成果に結びつけていただければ、いちプロボノとしても本望です。

今後もNPOのIT活用に役立つ記事を書いていきたいと思います。

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